ウェールズ×フードサステナビリティ

ウェールズ × フードサステナビリティ

サステナブル先進国のイギリス・ウェールズにおける
ユニークな取り組みを紹介します。

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Wales Sustainable Foods 
~サステナブルのさがしものはウェールズ へ~

いま、わたしたち日本人、そして世界各国の人々が大きな変革に直面しています。その変革の核となっているのは、この人間社会を持続可能な形にしていかねばならないとするSDGsの動きです。急激な気候変動は世界中に災害をもたらし、人や動物の世界にも脅威となるウイルスや疫病が蔓延する要因でもあると目されています。そうした自然環境の変化のみならず、私たちは急激に開く経済格差、平和を脅かす国家間の対立などの社会問題にも直面しています。こうしたすべての人間の営みにおいて、いま「持続可能な形で、しかし着実に発展する」という方向性が求められているのです。

そんなわたしたちが学ぶべきことが、ウェールズのサステナビリティへの取組にあるかもしれません。4つの地域から成る連合王国・英国の一つであるウェールズは、ラグビーやサッカーの強豪国として知られていますが、そのウェールズがサステナビリティにおける先進地であることをご存じでしょうか。ウェールズ議会発足以降、サステナビリティの実践は政策の重要な部分を占めていましたが、重要なマイルストーンが2015年に発行された「次世代の幸福のための行動指針」です。ここでは環境問題や生物多様性だけではなく、教育や文化の多様性の保護、貧困問題への対応や公正な賃金、男女格差の撤廃など、まさにSDGsの理念を政策として具現化した内容が法律として提示されています。SDGsをここまで具体的に政策にとりこんだのは世界でもウェールズが初といえます。2018年には世界に先駆けて気候変動への緊急事態宣言を発出。環境の持続可能性に敏感と言われるヨーロッパの中でも、飛び抜けて意識が高いのがウェールズなのです。

日本でもここ数年の間に、サステナビリティについての関心が高まっていますが、環境問題や食の倫理(エシカル)の問題に関しては、まだ議論が始まったばかりといえます。個人であっても、企業であっても、どのようなサステナビリティへの取組をすればいいのか見当もつかないという人もまだ多いと思います。ここは、そんな「サステナブルのさがしもの」をしているすべての人に向けた、ウェールズからの“手紙”です。日本に似て海に面し、山や川に恵まれたウェールズという地域のサステナビリティを知ることは、日本にとって大きな意味があるはずです。ウェールズがこれまで行ってきたサステナブルな施策を、とくに食料生産や食品製造における取組に焦点を当てて紹介していきます。

サステナビリティを重視する国、ウェールズ

ウェールズは英国において最も美しい地域といっても過言ではありません。北・西・南の三方を海に囲まれ、1400キロメートルにも及ぶ海岸線を歩けば、美しい砂浜はもちろんのこと、息を呑むように荘厳な断崖絶壁に出会うことができます。内陸は北から南まで山脈が走り、海に向かってなだらかな丘陵が描かれ、その間に無数の湖があり清らかな流れの河川とつながっているのです。驚くべきことに、この自然に満ちたウェールズの国土のじつに1/4にあたる面積が、国立公園または特別自然美観地域に指定されています。いかがでしょう、その景観の美しさと懐の深さのイメージが湧いてきませんか?

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ウェールズがサステナビリティを大切にする国民性を有するのは、そんな美しい自然に満ちた国だからかもしれません。サステナビリティを追い求めることは一方で国民生活に不便を強いることにもつながるように思われますが、ウェールズ政府は世界に類をみない手を次々と打っています。たとえばウェールズ政府は現在リサイクル率で世界の第3位にランクしていますが、これに満足することなくトップを目指すため、サーキュラーエコノミー戦略である「Beyond Recycling 」(https://gov.wales/beyond-recycling-0)を打ち出しました。日本でも一般ゴミや食品廃棄の問題が取り沙汰されていますが、国民の多くが「リサイクルを頑張ればいい」と思っている節があります。しかし、国際的には一度高度に製造されたものを資源化して再利用するよりも、そもそもの廃棄源を削減(リデュース)すること、廃棄する前に何らかの形で再利用(リユース)することの方が重要と言われています。ウェールズの戦略においては、2025年までに廃棄物を26%削減(2006~7年の数値を基準とする、以下同)し、廃棄物の埋め立てをゼロにし、また食品廃棄物を50%削減、どうしても廃棄にまわるものの70%をリサイクルにまわすことを目標にしています。そして2050年までには、食品廃棄と温室効果ガス(GHG)排出をゼロにしようという、驚くような目標を立てています。

Beyond Recyclingの図表

出典:Beyond Recycling(https://gov.wales/sites/default/files/publications/2021-03/beyond-recycling-strategy-document.pdf

またウェールズは再生可能エネルギーの利用が最も進んだ国の一つでもあります。2017年には電力消費の48%相当が再生可能エネルギーでまかなわれていますが、政府はこれを2030年までに70%まで上昇させる方針です。日本のはるか先を行くのは、政府の目標設定のみならず、ウェールズの産業界が意欲的にそれに応えているからとも言えます。政府や政策シンクタンクが打ち出す政策に沿った形で新しい技術が生まれ、それを積極的に国民生活に導入しようとしています。たとえば暖房によるエネルギー消費は、発生しても仕方が無いと思われるかもしれません。ウェールズではそのエネルギー消費を削減するべく、87万戸の住宅に特殊な断熱材を導入したり、地表や大気の熱をくみ上げるヒートポンプを17万台導入したりと、積極的な取組を推進しています。

食のサステナビリティとウェールズ

ウェールズでは、当然ながらこれからの食のあり方についてもサステナブルな発展に向けて邁進しています。ブレクジットやコロナウイルスなどの影響で苦しめられた英国経済ではありますが、そんな嵐の中でも今後10年間の食の業界の戦略である”Green shoots(芽吹き)”戦略が公表されました。ここでは持続可能な成長と生産性、気候と生態系への配慮、公正な労働、そして適正な収益の増加を目指し、はっきりと「世界で最も持続可能な食品・飲料業界の1つになる」ことを宣言しています。

このような姿勢は政府が一方的に宣言しているだけではありません。産業界ももちろんのこと、国民もサステナビリティを重視しています。信頼できるリサーチによれば、2021年、消費者の34%が環境に配慮し、持続可能な取組を行うブランドを選択しており、3人に1人の消費者が、エシカル面と持続可能性の面での懸念から、使用をやめたブランドや商品があると回答しています。このような国民性があるからこそ、ウェールズの食品関連企業はサステナビリティとエシカルに満ちた商品やサービスを提供使用としているのです。

ここでいくつか、ウェールズのサステナブルフードをご覧いただきましょう。

アングルシー島のブルーロブスター

ウェールズ最北端に位置するアングルシー島はその美しい景観が知られますが、ヨーロッパの食通が唸る「ブルーロブスター」の産地としても有名です。過去に乱獲された反省から、十分に成熟した個体のみを漁獲し、人工孵化にも取り組んで資源を維持しています。

伝統的漁法で獲るコンウィのムール貝

コンウィ城で知られるコンウィ川の下流では、200年もの間に培われてきた伝統的な漁法である20フィートの熊手でムール貝を獲っています。幼い貝が熊手の隙間からこぼれることで資源量が適正に保たれ、また海底の地形を不必要に破壊することがありません。

カンブリアン山脈の清らかな自然が生み出すティナント・ウォーター

豊かな自然環境がなければ、おいしい水も存在できません。ティナント・ウォーターはウェールズ地方中部、カンブリアン山脈の美しい自然が磨き上げたピュアウォーター。すべての食の基本となる水がおいしいことが、ウェールズの自然の素晴らしさを表しています。

豊かな牧草地を最大限に活かすカロンウェンのオーガニック乳製品

ウェールズの国土の半分以上を占める豊かな土壌は、海から運ばれるミネラルを吸収した栄養価の高い牧草に覆われます。ですからウェールズの酪農は放牧で高い品質の生乳を得られます。カロンウェンの酪農家たちは、独自の厳しいオーガニック基準で牛を育て、すばらしいミルク、バター、クリーム、チーズを生み出しています。

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ここでは、こうしたウェールズの食におけるサステナブルな取組について紹介していきます。あなたの“サステナブルのさがしもの”がここで見つかることを心から祈っています。