サステナブル先進国ウェールズ ⑤

パッケージもサステナブルに!なぜウェールズは「ゴミ問題」にも真剣なのか

パッケージもサステナブルに!なぜウェールズは「ゴミ問題」にも真剣なのか

なぜウェールズは「サステナブル・パッケージ」に取り組むのか?

我々が食べ物を買い求めるとき、多くの場合は食べ物が何らかのパッケージに包装されています。そのため「サステナブルな食」を考える上では、食べ物そのものの持続可能性に加えて、その食べ物を包装しているパッケージを持続可能なものへ変えることも重要です。

これまでラム肉、チーズ、ラム酒、ロブスターと、イギリス南西部・ウェールズにおける先進的なサステナブルな食べ物をご紹介しました。ですが、実はウェールズは世界で最も先進的な「パッケージの持続可能性」に取り組む国でもあるのです。今回は食べ物の話から少し離れて、ウェールズでの「サステナブル・パッケージ」についてご紹介しましょう。

パッケージの画像

ウェールズはパッケージ(容器包装)をはじめ、廃棄物のリサイクルについて世界で最も先進的な国の1つです。国内での廃棄物リサイクル率は約65%に達し、これは世界でも3番目に高い実績です。

しかし、ウェールズ政府はさらに高い目標も掲げています。それが2050年までに「Zero Waste」(ゼロ・ウェイスト)、つまり廃棄物をゼロにするという目標です。なぜウェールズはこれほどまでに廃棄物(ゴミ)の問題を重視しているのでしょうか。

その背景には、ウェールズ政府がゴミの削減を地球温暖化対策として捉えていることがあります。ゴミは海などに流出して自然環境を汚染するだけではなく、地球温暖化の原因である温室効果ガスの発生源にもなり得るのです。プラスチックの容器包装をはじめ、焼却処分ができないゴミは埋め立てによって処分されます。しかし、集められたゴミが埋立地で分解されていく過程では、二酸化炭素よりも強力な温室効果をもつメタンが発生します。つまり、プラスチックなどのゴミがリサイクルされずに処分されると、それだけ温室効果ガスの排出が進んでしまうのです。

ウェールズはいかにして廃棄ゼロを目指しているのか?

ゼロ・ウェイストを目指して、ウェールズ政府は段階的なゴミ削減目標のロードマップを設定しています。その計画では、2025年までに国内でのリサイクル率を70%に高めると同時に、ゴミの発生量自体も26%削減すること(2010年比)が目指されています。この2025年までの目標達成に向けて、ウェールズではすでに法規制が強化されています。

2024年から施行予定の事業者に対するリサイクル規制では、リサイクルすることが難しい容器包装を使用した事業者などに罰金が課される予定です。また、同じく2024年からはファストフード店などでの使い捨て紙コップの使用も規制されます。一般的に紙製品はリサイクルが簡単な特徴がありますが、使い捨て紙コップは汚れが激しく、再生紙にすることが難しいとされます。そのため、ウェールズ政府は飲食店での使い捨て紙コップの利用を規制し、代わりにリユースが可能なビンなどの利用を義務付けます。

水揚げされたロブスターの画像

こうしたレストランや食品メーカーへの厳しい規制は「汚染者負担原則」と呼ばれる考えにのっとっています。これは環境を汚染した者自身がその代償を負担すべきという、ヨーロッパでは広く見られる環境政策の基本方針です。ゴミ問題については、ウェールズのみならず、イギリス全体で汚染者負担原則を適用させる動きが広がっており、規制を強化することで事業者による自発的なリサイクル可能な包装使用の広がりが期待されています。

また、ウェールズでは容器包装そのものを環境に配慮したものへと転換することも目指されています。通常、プラスチックなどは石油などの輸入化石燃料から作られますし、紙も他国から輸入した木材を原料に作られます。このように、わざわざ原料を輸入するとその輸送過程などで環境負荷が大きくなってしまいます。

そこでウェールズで開発されているのが、地元でとれる植物から容器包装を作る取り組みです。ウェールズのバンガー大学とアベリストウィス大学は、イネ科の牧草であるライグラスから紙の原料となるパルプを作り出すことに成功し、この技術を使った容器包装は一部のスーパーマーケットで実用化される予定となっています。

「サステナブルな食」を実現するためには、食べ物が我々の手元に届く過程までを含めて、環境に配慮した持続可能なものへと変えていく必要があります。そのなかで、食べ物の流通に不可欠な容器包装をサステナブルにするのはとても重要なことです。

このように、容器包装からのゴミを削減するウェールズの先進的な取り組みには、日本が見習うべきことも多くあるように思います。もしウェールズへ足を運ぶことがあれば、食品のパッケージに注目してみて下さいね。

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